2021.02.20

去勢手術について(犬・男の子編)

去勢手術のメリット・デメリットについてまとめました。

去勢手術をしないとどうなるの?

オスは、小型犬で約7ヶ月から、大型犬では1歳頃から性成熟に達します。
わかりやすいのは足を上げておしっこするようになるという変化です。
より大きい犬とみせかけるために出来るだけ高い場所におしっこをするようになるそうです。
色んな場所でおしっこをしてまわり、最終的には足を挙げているだけでおしっこが出ていないことも。
これがマーキング行動です。
基本的には常に発情している状態にあるので、発情期のメスがいればすぐに察知して、
寄っていってしまいます。
マウンティング行動もよくみられます(腰ふり動作のこと。メスでもたまに起こりますが)。
また、男性ホルモンであるテストステロンの影響で攻撃的になることもあります。

去勢手術のメリット

発情によるストレスからの解放
私が子供の頃に飼っていた犬は未去勢のオスでした。
おだやかな犬でしたが、よく腰ふりをしていたし、よく脱走していました。
すごい力と執念で脱走し、行く先は決まって近所のかわいい犬(メス)のおうちの前です。
散歩中もそのおうちの前ではすごい力でぐいーっと引き寄せられたものでした。

徘徊は、交通事故につながりますし、通行人を咬んでしまうこともありえます。
これは飼い主がしっかり予防してあげなければいけない危険行為といえます。
去勢手術により、このメスを探求する衝動は抑えることが可能です。
マウンティングや足を挙げての排尿についても一定の効果があります。
攻撃的な行動も落ち着くかもしれません。
しかし、犬は学習する動物です。
一旦その行動が定着してしまうと、去勢手術をしても続いてしまうことがあります。
例えば足を挙げて排尿するようになった犬に去勢を行って、その行為をやめる可能性は50%といわれています。
そういった観点から、なるべく早期の去勢手術をおすすめしています。


生殖器関連疾患の予防
オスの生殖器に関連する疾患は概ね高齢で起こってきます。
去勢手術によりこれらの疾患の予防効果が期待できます。
・精巣腫瘍
…物理的になくなるのでありえなくなります。とくに潜在精巣といって精巣が下まで降りてきていない子では、リスクが高くなります。
・肛門周囲腺腫
…肛門周囲にできる良性腫瘍ですが、大きくなると表面が潰瘍化してしまうため外科手術を行うことになりますが、排便障害に発展してしまうこともあります。
・会陰ヘルニア
…会陰部の筋肉が薄くなり、その隙間から腸や膀胱が外側に逸脱してしまう疾患で、M.ダックスやコーギーなどが好発犬種です。
・前立腺肥大
…未去勢の高齢犬ではかなり一般的で、前立腺が過形成を起こした状態です。程度によっては、うんちやおしっこが出づらくなったり、血尿がみられることがあります。


不幸な命を生まない
例えばドッグランに、発情していることに気づかれず来ていた未避妊のメスがいたとしたら、望まない妊娠が成立してしまう可能性があります。
しつけで抑えられる行為ではありません。

去勢手術のデメリットは?

手術に伴うリスク
去勢手術は、麻酔前検査を行ったうえで実施可能と判断した場合のみ実施します。
そのうえで、犬種や体格など個体に合わせた鎮静・麻酔薬を投与し、気管チューブを挿入し、吸入麻酔による全身麻酔下にて、慎重なモニタリングをしながら行われます。
皮膚を切開して精巣を取り出す手術で、手術時間は約30分です。
腹腔内の潜在精巣の場合には、開腹して精巣をとりだす必要もでてきますので手術時間も長くなります。
やはり全身麻酔下での手術となります。
万が一のことがないとはいえません。
麻酔薬に対する特異体質的な過敏反応を起こす子もいて、死亡する確率はゼロではありません。
とくに短頭種では麻酔後に気道閉塞を起こしてしまうことがあり、手術が無事終わっても細心の注意を払って様子を観察する必要があります。


太りやすくなる
去勢手術により生殖に費やすエネルギーがなくなるので、エネルギー要求量は3割ほど落ちます。その反対に、性欲がなくなるぶん本能的に食欲は2割ほど増します。
代謝が落ちたところに必要以上に食べてしまうので、太りやすいというわけです。
とくに去勢手術までの成長期は食事を制限することはなく生活している場合が多く、若齢だからと手術後もそのままの調子で与えていると、縦だけでなく横にどんどん成長してしまうので、要注意です。
もちろん、一定量の食事を与え、適度に運動すれば、ちゃんと体型キープできます。


子孫を残せない
どうしてもこの子の子孫を残したい、という場合にはすすめられません。
このことは、術後どうしても覆すことはできません。


手術の実際の流れについては次のページをご参照ください。
避妊手術・去勢手術の実際について