2021.03.12

去勢手術について(猫・男の子編)

猫の去勢のメリット・デメリットについてまとめてみました。
当院では生後5ヶ月齢以降での去勢手術をおすすめしています。

去勢しないとどうなるの?

オスは通常7ヶ月齢頃から性成熟を迎え、精子がつくられるようになります。
オスの場合は、つねに発情できる状態にあり、発情兆候はメスの発情の声に誘発されてあらわれることが多いようです。
発情兆候には以下のようなものがあります。
・尿スプレー
 おしりをあげて後ろにスプレーをかけるようにおしっこをまきちらすマーキング行為です。
 においもきつく、家中にされると掃除がとっても大変です。
・大きな声でなく
 発情期のメスの声をきいて、ここにいるよ!とアピールするようになきます。
 あるいはほかのオスを牽制している声だとも言われています。
・家出しようとする
 室内飼育の猫でも、メスをさがして脱走をこころみるようになります。
 強い力で網戸をやぶってでていってしまうことも。
 人の出入りのちょっとした隙に出て行ってしまうことが多いので、注意する必要があります。
・攻撃的になる
 オス特有の発情兆候です。オスは自分の力を示すことでメスにアピールするので、攻撃的な行動をとることが多くなるようです。

去勢のメリット

家出しにくくなる
猫が行方不明になりやすい季節といえば恋の季節です。
去勢手術により、なんとしてもメスをさがしだそうとする家出の衝動が抑えられます。
感染症の予防
野良猫の間に感染が広がっている猫エイズは、咬み傷から感染するウイルスです。
すでにお外に出る癖がある子であっても、去勢することで激しいなわばり争いから一応は外れますし、メスをめぐる死闘に参加することもなくなります。
これにより、猫エイズに感染する機会が減るといえます。
とはいえ、なわばり意識の強い子は去勢してもなお強くなわばりを主張しますし、お外に出る以上ケンカに巻き込まれる可能性がなくなることはありません。
尿スプレーをしにくくなる
すでにスプレー行動が癖になってしまっている場合は、去勢をしても変化がみられないこともあります。
できれば尿スプレーの始まる前に去勢手術を行えると良いかと思います。
尿のにおいの緩和
未去勢のオスのおしっこのにおいは結構きついです。
去勢により、メスや子猫並みのにおいになります。
甘えん坊になる?
去勢をすると、攻撃的な行動が減り、穏やかな甘えん坊になる傾向にあります。
不幸な命を生まない
もしお外に出るのであれば、去勢手術は必須といえると思います。
去勢しないままお散歩を許可しているのであれば、それは野良猫の無秩序な繁殖に協
力していることと同じです。
室内飼育だったとしても、去勢をしていない猫は一生懸命お外へ出たがりますので、ふとした時に家出して、野良猫ちゃんを妊娠させてしまう可能性があるという自覚は持っておく必要があります。

去勢手術のデメリット

手術に伴うリスク
去勢手術は、麻酔前検査を行ったうえで実施可能と判断した場合のみ実施します。
そのうえで、鎮静薬と少量の吸入麻酔による全身麻酔下にて、モニタリングをしながら行われます。
陰嚢を切開して精巣を摘出する術式で、10分程度の短時間な手術となります。
開腹手術ではないため比較的リスクの低い手術ですが、
麻酔をかけることに変わりないので、万が一のことがないとはいえません。
麻酔薬に対する特異体質的な過敏反応を起こす子もいて、死亡する確率はゼロではありません。

太りやすくなる
去勢手術により生殖に費やすエネルギーがなくなるので、エネルギー要求量は3割ほど落ちます。その反対に、性欲がなくなるぶん本能的に食欲は2割ほど増します。
そのうえ成長するにつれて子猫のころのような運動はしなくなり、昼寝とひなたぼっこが趣味になっていきます。
代謝が落ちて運動しなくなったところに必要以上に食べてしまうので、太りやすいというわけです。
とくに去勢手術までの成長期は食事を制限することはなく生活している場合が多く、若齢だからと手術後もそのままの調子で与えていると、縦だけでなく横にどんどん成長してしまいます。
太った猫はかわいらしいのですが、糖尿病や肝リピドーシスなど病気のリスクは満載です。
とくにオスでは太ると尿道がせまくなるので、尿路結石がつまりやすく、これによる急性腎障害に要注意です。
尿pHに配慮された食事を一定量与え、工夫して運動を促し、体型キープを目指しましょう。

子孫を残せない
どうしてもこの子の子孫を残したい、という場合にはすすめられません。
このことは、術後どうしても覆すことはできません。


当院の実際の流れについては次の記事にまとめてありますのでご参照ください。
避妊手術・去勢手術の実際について